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122. 「新しい公共」について考えるパネル・ディスカッション
    参議院(行政監視委員会調査室、内閣委員会調査室)主催

 前回お知らせしたように、「新しい公共」について考えるパネル・ディスカッションが6月24日に参議院(行政監視委員会調査室、内閣委員会調査室主催)で開催されました。今日はそのご報告。(写真はすべて古林.)

【「新しい公共」について考えるパネル・ディスカッション】の趣旨についてはこのページの下をご覧ください。=>

今回のパネル・ディスカッションの関係資料(概要報告、議事録等)が送られてきましたので、この場で公開いたします。2010年10月3日 =>PDFダウンロード


パネリストたち

左から
パネリスト
郷原信郎氏(名城大学教授・総務省コンプライアンス室長)
福嶋浩彦氏(中央学院大学教授・「新しい公共」円卓会議構成員、前我孫子市長
竹田青嗣氏(早稲田大学教授・哲学者)
武田康弘氏(白樺教育館館長・哲学者)
司会
荒井達夫氏(行政監視委員会調査室・首席調査員)

郷原さん

 郷原さん:
 コンプライアンスとは本来、社会の要請にこたえる形で法令を運用することであって、単なる機械的な法令遵守であってはならない。
 そして、社会の要請(公共のあり方)とは何なのかを自分の頭で考え、議論を深めていくことが大事である。


 福嶋さん:
 公共とは、『市民の公共』であり、それ以外の公共、公は存在しない。『官』は、『市民の公共』を実現する道具に過ぎない!
 『公』と『公共』を分ける考え方は、民主主義に反し、新しい公共にならない。

福嶋さん


竹田さん

 竹田さん:
 現代社会のありようとしては、民主主義、自由主義経済、この二つしか採るべき道はない。その点で、ルソーとヘーゲルを評価する。
 そのために、市民社会の基本の原理=公共というものをしっかり捉えておくことが必要。そうでないと、問題の中心が見えなくなってしまう。
 『公・私・公共 三元論』は、この市民社会の基本の原理に反し、問題のある理論だ。


 タケセン(武田康弘教育館館長)
 私たちの国・社会は主権者(私たち)が作っている=公共、というのが原理。
 ところが、日本の社会では、新しいも古いも『公共』が成立しない。自分で発想して意見を述べること自体が否定されている。空気だけがあって皆の考えがない。
 『公共』の土台として、子供の頃から実体験を通じて『自分たちで創り上げていく』学ぶ場が必要だ。
 私はこの社会を作っている一人だ!
この主体性は内容・中身を問う教育によってしか育たない。

武田さん


 パネリストの論旨を単純化すると、以上のようになりますが、実は途中、タケセンが立ち上がって『公共の土台としての教育』の話を熱く語った場面がありました。
 これで会場は熱のこもった場に一変し、他のパネリストにも伝染(笑)していったのでした。

武田さん




竹田さん

<=
力強く、近代社会の理念について語る竹田さん.

 

=>
『官』は、『市民の公共』を実現する道具に過ぎない!と宣言する福嶋さん.

 

福嶋さん

郷原さん

<=
武田さんに言いたいこと(公共の土台=教育)先に言われちゃった!
と武田さんに同調する郷原さん.

 

=>
ディスカッションの最後は、参加者からの質疑と応答.時間が足りず、うれしい悲鳴でした.

 

荒井さん

集合写真

 もっとやりたかったなあ、という顔に見える?パネリストおよび主催者の面々.

 さて、今回のパネル・ディスカッション、パネリストは一見バラバラで、『公共』と一体何の関係があるの? 当初、こういう懸念も一部にあったようですが、内容を聞いて多くの人は納得したのではないかと思います。
一見バラバラのようですが、各パネリストの話の根っこにあるのは【公共=主権者の意思】です。 それこそが社会を運営する基本なのだという点で串刺しされていました。
郷原さんは、コンプライアンス(法令遵守)という観点から、福嶋さんは地方自治という観点から、竹田さんは 市民社会の原理という哲学レベルの観点から、タケセンは、市民社会の原理を支える条件という最も深い レベルから『公共』の話をしました。
さまざまな レベルからアプローチする公共論は大きなうねりのように参加者に迫ったと思います。
 また、パネリストの自己紹介の際に、、『パネルディスカッション ”ふつう”の復権(緑と市民自治 1992年10月10日号)』の コピーが配布されました。会場の皆さんは、18年を隔てた二つのパネルディスカッションに、不思議なつながりを感じたのではないでしょうか。

 なお、今回のパネル・ディスカッションの内容については、いずれ何らかの形で参議院から公開されることになるはずです。私たち主権者の税金によって運営されているのですから。

 参考までに、今回のパネル・ディスカッションに関するタケセンと荒井さんのコメントがありますので、興味のある方はこちら=>


以下、参考までに今回のパネル・ディスカッションの案内です.

「新しい公共」について考えるパネルディスカッション

行政監視委員会調査室
内閣委員会調査室

○趣旨

前鳩山内閣では、「これまで官が独占してきた領域を公(おおやけ)に開き、新しい公共の担い手を拡大する社会制度」の構築に向けた検討が進めら れ、本年6月4日、「新しい公共宣言」がとりまとめられた。この施策は、現在の菅内閣でも引き継がれており、「新しい公共」の思想は、今後の我が国の国家 運営の全般にわたり影響を与えることになると予想される。
しかしながら、「新しい公共」が真により良い社会の実現につながるためには、行政において主権在民=国民主権の理念が徹底されることが不可欠であ る。行政において主権在民=国民主権の理念が徹底されることなく、単に「官」の組織・業務のスリム化を目的として「新しい公共」に関する施策が実施される 場合、「官」の役割が曖昧になり、責任の放棄となる可能性が高く、また、活躍が期待されるNPOは、天下りの多い公益法人のように、「官」が自分たちの独 自の利益を図る下請け機関に過ぎなくなるおそれがあるからである。
「新しい公共」の実現のためには、「官」の意識改革が必須となる。そこで、「公共」の思想と実践に詳しい4名の有識者の方々にお集まりいただき、 「新しい公共」の意義と問題点についてパネルディスカッションを行い、その成果を「立法と調査」で公表することとしたい。

○パネリスト

・郷原信郎(名城大学教授・総務省コンプライアンス室長)

・竹田青嗣(早稲田大学教授・哲学者)

・武田康弘(白樺教育館館長・哲学者)

・福嶋浩彦(中央学院大学教授・「新しい公共」円卓会議構成員)

○日時等

・日時:6月24日(木) 13:30〜15:30
・場所:調査室7F大会議室
・司会:荒井達夫(行政監視委員会調査室首席調査員)


関連記事→

121. 「公共」をめぐるパネル・ディスカッション
   18年前と明日(6月24日)のパネル・ディスカッション
119. 『行政監視と視察』発刊・画期的な報告書 (行政監視委員長・視察報告)
116. 二人のタケダ(竹田青嗣・武田康弘)思想
   荒井達夫著(参議院『立法と調査』論文)
115. 「東大病」についての対話 (1)&(2)+コメント
112. 日経新聞/『街の哲学 人を動かす』
111. 10月より武田館長 参議院・行政監視委員会の客員調査員-講師に
108. 東大病 ‐ 「キャリアシステム」を支えている歪んだ想念
106. 公と公共の分離への批判 2. ざっくばらんに言えば・・・
105. 公と公共の分離への批判 ‐武田館長の見解‐
98. 東京新聞/ 天下り根絶 『良識の府』が問う
  「公僕の原則 見失うな」
97. 武田康弘館長による【哲学】する公開講座
ー市民アカデミア2008 の総括

96.『立法と調査 別冊 2008.11』発行のお知らせ
  特集 「国家公務員制度改革とキャリアシステムに 関する意見調査」
95. 武田康弘館長による【哲学】する公開講座 ー市民アカデミア2008
94. 写真速報 『公務員を哲学する−市民社会と公共性を考える』
  ー市民アカデミア2008
93. 参議院調査室からの論文依頼 
  『「国家公務員制度改革とキャリアシステム」 について』
92. 公開講座『公務員を哲学する−市民社会と公共性を考える』
  ー市民アカデミア2008のご案内
90. 公(おおやけ)と公共を分けるべき!?
89. 「公共哲学と公務員倫理」 〜パネルディスカッションを振り返って〜
87. 参議院主催パネル・ディスカッション「公共哲学と公務員倫理」
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84. 金泰昌(キム・テチャン)‐武田康弘(たけだやすひろ) の 恋知対話(往復書簡)
   Part 2. 前編
83. 幻の「白樺特集号」 『公共的良識人』07年2月号掲載予定の原稿公開
81. 金泰昌(キム・テチャン)‐武田康弘(たけだやすひろ) の恋知対話(往復書簡)
   Part 1. 完結
76. 市民自治を創る
75. 12.23 キムさん・タケセンを軸にした白樺討論会〈第5回白樺討論会〉
74. 12.9〈第4回白樺討論会〉 山脇氏・武田氏
73. 10.8〈第3回白樺討論会〉 稲垣氏・古林氏
72. 9.9〈第2回白樺討論会〉 山脇氏・荒井氏
71.「白樺教育館の活動は、日本における注目すべき動向」 ―高い評価を頂きました
20.問題提起としての書評 -「公共哲学とはなんだろう」-
69.『6.3金さんとの対話』の感想 ー 染谷裕太、中西隼也、 中野牧人、楊原泰子、古林 治、清水光子(+川瀬優子)、 舘池未央子
65.民知・恋知と公共哲学
64.民知=恋知とは?(柏市民新聞・依頼原稿)
63.8・7会談−竹田青嗣氏・山脇直司氏・武田康弘氏
61.民知宣言!「公共哲学」編者ー金泰昌氏来館・会談


概要報告追加 2010年10月3日
2010年7月8日
古林 治

 
 
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