平成20年7月29日
武田康弘様
参議院行政監視委員会調査室長 西澤 利夫
内閣委員会調査室長 小林 秀行
総務委員会調査室長 高山 達郎
「国家公務員制度改革とキャリアシステム」
に関する意見調査について
拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、先の第169回国会において去る6月6日、いわゆるキャリアシステムの廃止を目的とする国家公務員制度改革基本法(以下「基本法」といいます。)が成立しました。キャリアシステムとは、採用時の1回限りの試験で中央省庁の幹部要員の選抜を行い、同期の者はほぼ同時期に昇進していくことを原則とする人事管理の方法のことですが、法的根拠はなく、単なる人事慣行として行われているものです。
このキャリアシステムの廃止は、国家公務員の早期退職と天下りの廃止、省庁割拠主義の是正、独立行政法人の整理合理化に直結する我が国の行政における重大問題であり、これまで様々な議論が行われてきたところであります。また、人事院は、「平成19年度年次報告書」の中で、キャリアシステムの弊害について「従来から、『採用時の1回限りの選抜で、生涯にわたる昇進コースまで決定されるのは不合理である』、『閉鎖的なキャリアシステムが特権的な意識を生じさせている』などの批判がなされてきた。」と述べています。
しかしながら、基本法にはキャリアシステムの廃止を妨げるおそれのある施策が盛り込まれているとの批判も強くあり、国会審議では、キャリアシステムの廃止ではなく、法律による制度化であるとの意見や、国家公務員の大学卒業者採用試験を「総合職と一般職」に分けることで、今以上の「スーパーキャリア」を誕生させることになるのではないか、という疑問も出されました。
審議が行われた参議院内閣委員会における基本法の採決の際の附帯決議では、キャリアシステムの廃止について、政府は次の事項に万全を期すべきであるとしています。
「キャリアシステムの廃止が法制定の目的であることを踏まえ、職員の人事管理が採用試験の種類にとらわれてはならない旨の規定を完全に実施するよう最大限の努力を行うこと」、「公務員が憲法第15条第2項に規定する全体の奉仕者であることを踏まえ、幹部候補育成課程の対象者に特権的意識を持たせるものとならないよう研修等において十分配慮しなければならないこと」
以上がキャリアシステムの廃止をめぐる最近の国会の動向ですが、中央省庁の幹部職員に求められている政策の企画立案や業務管理の能力の有無は、果たして採用試験で判定できるのかどうか。官製談合等の重大な公務員不祥事の発生を防止するための公務員研修は、一体どうあるべきなのか。そもそも民主制国家を支える国家公務員には、どのような資質が求められているのか、等々。キャリアシステムについて議論する場合には、これらの問題を民主制国家における一市民・生活者という観点から考えることが不可欠であり、そのためには公務と公務員の現状を直視し、素朴な問題意識から常識に基づいて考えることが何より重要ではないかと存じます。
そこで、この度、国家公務員制度改革に関する議会の行政監視及び議員の立案等に資するため、「キャリアシステムの廃止〜民主制国家を支える国家公務員の育成のために〜」をテーマに、国内の有識者の方々のご意見を幅広く調査することを企画しました。
お忙しいところ恐縮ですが、趣旨をご理解いただきまして、「別紙要領」により、キャリアシステムの廃止について率直なご意見をお寄せいただければ、と存じます。お送りいただきましたご意見については、原則として原文のまま、とりまとめ、印刷物として関係議員に配布するほか、参議院のホームページ等で公表することを予定しております。
突然のご依頼で誠に申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。
敬 具
(別紙要領)
○テーマ:「キャリアシステムの廃止
〜民主制国家を支える国家公務員の育成のために〜」
○論点:
・キャリアシステムをどのように理解、評価しているか。
・キャリアシステムの廃止のためにどうすべきと考えているか。
・民主制国家を支える国家公務員の育成に何が大事と考えているか。
※これらの論点に限らず、自由に論じてください。
○字数等:2,400字以内
※氏名・肩書きを明示してください。
○締切り:平成20年9月末日
※原稿は、E-mail又は郵便で下記の「連絡先」にお送りください。
○謝礼:18,000円
※薄謝ですが、謝金としてお支払いします。
○参考:荒井達夫「国家公務員制度改革とキャリアシステム〜参議院による行政監視の意義〜」(「立法と調査」本年8月発行に掲載予定)
※重要論点について簡潔にまとめてありますので、参考にしていただければ幸いです。
○連絡先(事務担当):参議院行政監視委員会調査室 次席調査員 荒井達夫
※執筆の可否をご連絡いただければ、大変有り難く存じます。 |