前回お知らせしたように、1月22目(火)に、参議院の調査室が主催するパネルディスカッションー「公共哲学と公務員倫理」が行われました。
国会開会中にもかかわらず多くの方々が集まり、ほぼ満席(40名程度)と相成りました。ちなみに傍聴者は、参議院の各調査室、法制局、国会図書館、さらに人事院などの方々だったそうです。(私・古林はタケセンの随伴者ということで特別参加。ラッキー!)
今日はそのご報告です。
パネリストは、金泰昌(キム・テチャン)氏(73才 公共哲学共働研究所所長)、山脇直司氏(58才 東京大学大学院教授)、荒井達夫氏(53才 総務委員会調査室次席調査員)および武田康弘(55才 白樺教育館館長)です。(荒井氏はパネリストと議事進行役の兼任)
冒頭、司会の荒井さんの次の言葉によって、このディスカッションの性格が方向づけられることになります。『公共哲学の基本は市民による対等な対話によって成り立ちます。したがって、この場では、先生と呼ぶことをやめて対等の立場での対話を目指します。また、一人当たり3分程度の発言とします。』
互いに『さんづけ』で呼び合うことによって、学歴、年齢、性別、職業、役職その他一切の人間属性による差を棚上げして対等な立場での率直な対話を可能にしようというわけです。また、時間を制限することによって講義化(教える-教わる一方通行的関係化)することを避け、明晰な発言によって誰にもわかる形での説明が否応なく求められることになります。
この約束事にしたがって、いきなりタケセン(武田康弘教育館館長)がズバッと簡潔に現・「公共哲学」の問題点について発言しました。
これによって、ほぼ完全な自由対話の場が発現したわけです。自由対話への強い意思だけがそれを可能にするというわけです(素晴らしい!)。
いきなりズバッと論点に迫るタケセン.
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『いや、それは違う!』とストレートに反応する金さん.
ディスカッションはこんな感じで冒頭から白熱したものになりました. |
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討論が横道にそれぬよう留意しながら問題提起する荒井さん. |
応える山脇さん.
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その場にいる人たちの心に届くように、常に深いところから言葉をつむぎだすべく奮闘している様子が伺えます.これは日常の小学生相手の授業とまったく変わらない全実存をかけた営みですが、伝わりますかね。 |
それに応えるべく、熱の入る金さん.中々鬼気迫るものがあります.
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本来的な自由対話というものが人の思考をどれだけ刺激し活性化させるものなのかを目の当たりにし、同時にその面白さと可能性を感じ取られた方も少なくなかったのではないでしょうか。本質が見えてくる、自分も語りたい、もっと深く知りたい、こういう感覚は人間本来の本質的性向に違いありません。参加された方々はどのように感じられたでしょうか。
いずれにしても、これほど率直な自由対話はそうそうあるものではありません。冒頭でも触れましたが、強い意思が必要です。ですが、それだけ得るものが大きいのですから、この本来的な自由対話というものをこれからも続けていって欲しいものです。
さて、今回の対話の論点を端的にまとめてしまうと、以下のようになります。
1. |
政府の公と市民の公共を明確に分けて考えるべきである。場合によっては市民の公共に反する政府の公も認めるべきである。(金さん)
VS.
民主制社会では公(官)と公共を分けてはならない。官は公共を実現するための機関である。(武田康弘) |
2. |
"日本は国民主権だが、それは天皇に寄託され、天皇が行使すると解釈すべきである。(金さん)
VS.
日本は敗戦によって、天皇主権から国民主権へと大きく変わり(敗戦が市民革命に似た役割を果たした)、基本は民主制国家であると誰もが認識している。(武田康弘) |
3. |
「公共哲学」は、公務員試験になじまず、導入すべきでない。(全員一致) |
1.と2.については金泰昌(キム・テチャン)‐武田康弘(たけだやすひろ) の 恋知対話(往復書簡) Part 2. でも議論されてきましたので、内容についてはそちらを参照していただくとわかるかと思います。
また、ディスカッションの詳細については、録音内容すべてが文書化され、参議院の専門情報誌である「立法と調査」(特集号、2月くらいに発刊)に掲載されます。これは全国会議員に配布されるものです。同じ文書はPDF化され参議院ホームページでも公開されることになっていますので、興味のある方はダウンロードして見てください。(公開されたらまたお知らせします。)
今回のディスカッションの主テーマでもあった公務員倫理については残念ながら時間の制約により、さわりの部分のみに終りました。2時間に及ぶディスカッション終了後も参加者からの質問が多く、応答に30分を費やしました。全体に、もっと時間が欲しい!、もっとやりたい! という雰囲気がかもし出されていたように思います。続きがあるといいですね。大好評だったといいますから多分・・・
闘い終わって・・・・(笑)
おまけ:
パネルディスカッション終了後はちょいとアルコールも入っての第2ラウンド(3時間15分)となりました。その様子は以下の通りです。
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赤坂のロイヤル・ホストにて.
アルコールも入ってさらに舌が滑らかに. |
左から山脇さん、金さん、私・古林、タケセン
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振り返ってみると、今回のディスカッションはまさに公的な場(参議院)で、官・民・学それに加えて外国人も入っての自由対話が現実に行われてしまったということですね。よく考えてみると、とんでもなく画期的なことです。こんなことが日常的に行われることが『公共哲学する』ということなのかもしれません。
この成果が今後とも発展していくことを願わずにはおれません。
というわけで、お忙しい中、皆様お疲れ様でした。
またの機会に。
参考:
荒井さんの論文(「公共哲学と公務員倫理−民主制国家における公務員の本質」が参議院ホームページに公開されています。興味のある方はどうぞ。)
なお、今回のパネルディスカッションに関する荒井さんの感想が『公共的良識人』紙3月号に掲載されるそうです。掲載されましたら、このホームページ上でもご紹介できるかも。
追加:
1. |
許可をいただいて、添削なしのディスカッションの経過全部を録音したファイルを公開できることになりました。教育館ホームページ別館でダウンロード可能です。
興味のある方はどうぞ。(2008年2月5日) |
2. |
【参議院主催パネル・ディスカッション 「公共哲学と公務員倫理」】の内容がそのまま文書化され、『立法と調査』別冊2008.2月号(参議院常任委員会調査室・特別調査室発行)に特集として掲載されました。この雑誌は、2月20日に衆議院と参議院の国会議員全員に配布されました。 なお、これは、我孫子市長と議長、図書館と、中央学院大、千葉大、東大、京大など幾つかの大学の総長にも送られたとのことです
また、PDFファイルとして一般にも公開されました。
=> 別冊(平成20年2月20日) 特集:パネルディスカッション「公共哲学と公務員倫理」 からダウンロード可能です。(2008年3月10日) |
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