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7.教育館の彫刻、オブジェ

 今日は白樺教育館の彫刻、オブジェを紹介しましょう。
その前にちょっと前振りを。

 民藝(みんげい)という考え方を広めたのは周知のように 柳宗悦(むねよし)です。その柳の逸話(いつわ)にこんな話があります。
 柳家で普段日常的に使っている食器類がときどきなくなることがあるそうな。 よく探してみると民藝館の陳列棚に設置されていた、なんてことがたびたびあったといいます。

 『用の美』を説いた柳の面目躍如(やくじょ)といったところですね。
でもこれは一体何を意味しているのでしょうか。もうちょっと考えてみましょう。

う〜ん、と。
 美術品は専門家によって評価され、作品の世俗的な価値(要するに値段ですね)もそれによって決まってくるといってよいでしょう。美術品は専用の施設にありがたく陳列され、私たち一般人には美術品そのものに価値があるかのように思わせます。
 でもちょっと待ってください。本来美術品ていうのは、私たち人間に、より良い、豊かな生をもたらすために持ち込まれたものではなかったのか。私たちの生と切り離された美のための美の追求ではなく、私たちの生活世界からもう一度美というものを見直してみようじゃないか。
 柳の民藝の思想からはそのようなメッセージが強烈に放たれているような気がします。

 ここには普遍的な思想が流れています。たとえば哲学に土俵を移せば、こんな風にいうこともできるでしょう。

 優れた哲学は、歴史上悲惨な状況に人間が直面したときの苦悩と絶望、そして『人間にとってより良い生とは何か、どのように考えたらよいのか』という未来への希望から生まれてきたといえます。
 市民社会の原理、民主主義もまたそこから生まれたのです。学問の世界で純粋に哲学的知識を集積したり、理論の微細な差異を探求したり、論理的な厳密性を追及することと、私たちの豊かな生を実現することとは何の関係もありません。要は私たちがより良い生を享受できるような、生活世界に立脚した考え方を追求することが重要なのです。

 いつのまにか 民知の説明のようになってしまいました。話を戻しましょう。教育館の彫刻・オブジェはすべて、生活の場の中に置かれています。実際に来館する皆さんが使うものも少なくありません。『用の美』そのものともいえます。
ただし、民藝は姿の見えない民間の工人の技から生まれたものですが、教育館に置かれたものは個人の意志が明確にある作品群ですから民・芸術ということになりましょうか。

 さて、学問は大学で、音楽はコンサートホールで、美術品は美術館で、などと硬直なことをいわず、生活世界からこれらを問い直してみようではありませんか。知識の集積より民知の追求です。


教育館本部看板

看板

ステンレス 2m
設計: 武田康弘
製作:松岡工房「アインズ」
題字「白樺教育館」: 桜井麻紀子
書き文字 「しらかばきょういくかん」、「ソクラテス教室/小学部ー高等部」、「白樺フィロソフィー/成人部」:灰玉平(はいたまだいら)タカコ

ブロンズ彫刻 BOCOS

幾何学の原理の愉悦

 このブロンズ彫刻は、アカデメイア(プラトンの学園〉の精神の表現です。
人間の教育一普遍的な思索のためには、幾何学の原理を知ることが不可欠です。( 武田康弘

彫刻制作:中津川督章
台 座 : 佐治正大

BOCOS

自帰依
この大理石、実はギリシャ産なんです。プラトンのアカデメイアを目指す白樺教育館にふさわしいと思いませんか。

彫刻(大理石)自帰依(じきえ)
白樺スピリットの表現
(白樺派の精神〉

 我孫子を拠点とした20世紀日本最大の文化創造・変革の運動、白樺派の精神―人間の生は個性的である他はない。鳥は鳥、私は 私の声を出す―を石彫で表現したもの。
民知(生活世界から立ち上る英知)を生み出すためには自分の内なる声に帰依することが必要という武田哲学を、石彫家・佐治正大が 形にした。
白樺文学館の玄関前には、この大型の彫刻を設置した。(武田康弘

石彫制作: 佐治正大

参考:白樺文学館の彫刻類

上:玄関灯

 鉄 製作: 松岡信夫

下:ネームプレート

 銅 製作: 木村国男

玄関灯

傘立て

傘立て

 鉄 製作: 松岡信夫

 

銅の受け皿

 製作: 木村国男

帽子かけ

 鉄 製作: 木村国男

帽子かけ

テーブルとオブジェ

テーブルとオブジェ 鉄、木、その他

製作: 松岡信夫

オブジェ(鳥)

 鉄 製作: 松岡信夫

オブジェ(鳥)

花瓶とオブジェ

上:花瓶 

 製作:  関谷 俊江

 

下:オブジェ

 鉄 製作: 松岡信夫

椅子とオブジェ

 鉄、木 製作: 松岡信夫

椅子とオブジェ

スタンド

右:スタンド

 鉄 製作: 松岡信夫

 

左:燭台(しょくだい)

 鉄 製作: 松岡信夫

松岡さんの作品にはいずれも生命力の強さ、エネルギーを感じますね。

彫刻

 ブロンズ 製作:中津川 督章

無骨な形のストーブの存在は部屋の中ではウザったいものですが、この『手』でどれほど救われていることか。

手

ブロンズ像

彫刻

 ブロンズ 製作:中津川 督章

似たモチーフでもっと大きなものが白樺文学館のエントランスにも設置されています。―――ー>白樺文学館の彫刻類

オブジェ(猫)

 鉄 製作: 松岡信夫

オブジェ(猫)

オブジェ

オブジェ

 木 製作:中津川 督章

中津川さんの作品は幾何学的な形が多いのですが不思議とホッとするような作品が多いです。

マグカップ、花瓶、器

 製作:関谷 俊江

来館者や子供たちがここで愉しい授業を受けています。
テーブルはタケセンの自作。

マグカップ

コーヒーカップ

コーヒーカップ

 製作: 関谷 俊江

何ともいえず飲みやすく、味のあるカップです。普段私もこのカップでコーヒーをいただいとります。

花瓶

 製作: 関谷 俊江

花瓶

 いかがでしたか。より豊かな生を満喫することは必ずしも大きな家に住んだり、高価な車や調度品に囲まれることでもなく、ましてや有名な美術品を所有することでもないですよね。
 中々生活に余裕(お金というわけではないです)がないと出来ないことですが、身近なところからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。私もちょっと考え直してみようか、という気分です。
 これもまた民知の追求にちがいありません。

2002年4月19日 古林 治

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