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12.わたしが選んだ2001クラシックベスト10 

 白樺文学館時代にもありましたが、 教育館館長タケセンによる《わたしが選んだクラシックベスト10 》の再開です。
 普段、あくせく仕事や勉強に没頭している方、たまにはよい音楽を聴いて心を癒(いや)してみませんか。
2000クラシックベスト10 はこちら‐‐ー>


1.

ラモー 歌劇「ダルダニュス」全曲

 

マルク・ミンコフスキ指揮/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル合唱団
ARCHIV PRODUKTION UCCA-1012/3  2枚組み ¥6,116

 

 優れたラモーの演奏を聴くたびに、「明晰・公正・均整の永遠のレッスン」(J.=p.マソン)という言葉を思い出す。ダルダニュスは、フランス古典精神の最良・最大の具現者・ラモーの大作。〈悦楽〉と〈嫉妬〉との闘いのオペラで、最後には、〈悦楽〉の神=愛神エロースが勝利する。
 音楽、演奏、録音とも一分の隙もなく美しく充実している。

2.

バッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ」

 

シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン)
BMGファンハウス BVCD-34010〜11 2枚組み ¥4,800

 

 ピリオド楽器(古楽器)による、クイケン2度目(18年ぶり)の規範的とも思えるバッハ無伴奏。何の行為も衒いもなく、凛として輝くヴァイオリン。言葉はいらない。純粋な音楽―バッハだけがある。

3.

モーツァルト
「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」他 

 

五嶋みどり(ヴァイオリン)/今井信子(ヴィオラ)/エッシェンバッハ(ピアノ) 
SONY RECORDS INTERNATIONAL 
  SRCR 2595 ¥2,520(CD)
 SIGC1    ¥3,150(SACD)

 

 五嶋みどりのヴァイオリンも今井信子のヴィオラも実に美しい音色。落ち着き安定した大人の演奏だが、表情は瑞々しく、浮き浮きしてくるような新しさに満ちている。
 こんな素敵なモーツァルトは、滅多に聞けるものじゃない!必聴。

4.

シューマン
「ダヴィッド同盟舞曲集 作品6(初版)」他

 

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
GURAMMOPHON UCCG-1026

 

 鋭い知性と強靭なテクニックに豊かな情意が加わって、今、ポリーニは世界最高のピアニストだろう。
 輝かしく、シャープで力感溢れるピアニズムが、シューマンの神髄を透明に浮き彫りにする。〈ダヴィッド同盟〉とは、シューマンがつくった「新しい文化を創るために保守主義者と闘う」架空の同盟団のこと。

5.

ブルックナー 「交響曲第8番 ハ長調」

 

マギュンター・ヴァント指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
BMGファンハウス ¥2,940

 

 2001年1月、ベルリンでのライブ。
 若々しい知性を保った89歳の賢者がつくる音は、透明でかつ色彩豊かだ。自由で豊穣な生命力に満ちたブルックナーの傑作―第8シンフォニーのこの名演は、神的ではなく人間的なエロスに溢れている。
 緻密でかつ温かく、内的充実の極みだ。外面的演出は、微塵もない。

6.

サン‐サーンス「チェロ協奏曲」 
チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」他

 

ピーター・ウィスペルウェイ(チェロ)
CHANNEL CLASSICS 16501

 

 つややかで、なめらか。かつしっとりとした深い音。何を弾いてもウィスペルウェイは、見事な音楽を軽々とつくってしまう。深い音楽を奏でても、少しも暗くならない。いつまでも聴いていたくなるような心地よさ、ウィスペルウェイ―このチェロの天才は、どこまで行くのだろうか。

7.

ドヴォルザーク 「交響曲第8番」他

 

ジョージ・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団
EMI CLASSICS TOCE-59014

 

 1970年、セル最後の録音。オーケストラ合奏音楽のひとつの結論。格調高い純粋・完璧な名演の再発売。
 LP時代、私は何百回も聴いたが、いつも新鮮。

8.

シベリウス
「交響詩《フィンランディア》作品26」他管絃楽曲集

 

ネーメ・ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団
GRAMMOPHON UCCG-8027

 

 地の底から這い上がってくるような力と、森林の主や精霊と、北国の抒情と。
 シベリウスのポピュラーな管絃楽曲集。自分たちの音楽を奏する自信と喜びに満ちた感動的な名演。

9.

マーラー 「交響曲第9番ニ長調」

 

小沢征爾指揮/サイトウ・キネン・オーケストラ
SONY RECORDS INTERNATIONAL
SRCR2725-6 2枚組み ¥3,150

 

 昨年の「復活」に次ぐ同コンビの東京文化会館でのライブによるマーラー第2弾。
 「死」と「形而上学」の交響曲を「親しみ」と「日本的抒情」の音楽に変えてしまった独創的名演。小沢・サイトウキネンのうまさ、美しさ、繊細さには唖然としてしまう。リズムもテンポも極めて心地よい。「死」はここでは自然・日常の世界になっている。第4楽章の弦の歎美的とも言える美しさには、「思考」や「信仰」ではなく、「濃やかな優しさ」による救いを感じる。
 日本発の、新・マーラーだ。

10.

ストラヴィンスキー 「春の祭典」

 

ワレリー・ギルギエフ指揮/キーロフ歌劇場管弦楽団
PHILIPS UCCP-1035 

 

 「カリスマ指揮者」という呼称にふさわしい濃密で色彩に富み、凄絶なまでの迫力を持った演奏。しかも音楽の表情は千変万化する。
 春の祭典の原始性の面白さを味わうのに、これ以上の演奏はないだろう。とにかく凄い。

特別編

 

「柳兼子/現代日本歌曲選集」
  AUDIO LAB OVCA-00002 ¥2,500
「柳兼子/声楽リサイタル」         
  AUDIO LAB OVCA-00001 ¥2,500

 

 現代日本の歌い手とのあまりの落差。"歌う"とはどういうことか? この二枚は必聴・必携だ。全ての日本人に聞いてもらいたい。
柳兼子について知りたい方はこちら‐‐ー>

武田康弘

2002年7月7日 古林 治

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