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114. ブラームス交響曲全集
   ラトル・ベルリンフィルのライブー21世紀のルネサンス

 前回は音楽関連・オーディオのお話をしましたので、今回も引き続き音楽のお話です。

ブラームス交響曲全集 ラトル・ベルリンフィルのライブー21世紀のルネサンス

2009-12-02 13:09:10

ブラームス

わたしは、ブラームスの交響曲全曲を昔からいろいろ聴き、CDもかなりの数を持っています。

クレンペラー・フィルハーモニーの超絶的な力に満ちた巨大な音楽。
ベーム・ウィーンフィルの緻密な職人芸による演奏。
バーンスタイン・ウィーフィルの艶やかなパトス。
バルビローリ・ウィーンフィルのイギリス紳士的ロマンの自己主張。
ヴァント・北ドイツ放送交響楽団のストイック・求道的な音楽。

全集ではありませんが、誕生時のパリ管弦楽団を指揮したミンシュの1番は、ふくよかで大きく、明るく輝かしい音楽です。また、ウィーンフィルを思い通りにコントロールしたクライバーの4番は、峻立するカンタービレとでも言いたい意志的な演奏です。 

先ごろ発売された新録音であるラトル・ベルリンフィルの演奏(ライブ)は、とても分かりやすく、かつ聴き応えがあります。音は力強く、美しく、生理的な快感を覚えます。思い切りとリズムがよく、輝かしい音楽です。

この演奏が嫌いという人は、よほどの渋好みでない限りいないでしょう。21世紀の新しいブラームスです。

20世紀の最後に録音され、高い評価を受けたヴァント・北ドイツ放送交響楽団の演奏と比較すると、その特徴がよく見えます。テキパキと前進し、「楽譜の客観」を追い詰めるストイックなヴァントの演奏は、正解を求め、「あるべき」世界を求めた20世紀を映しているかのようです。

ラトルの演奏は、それとは全く異なり、内から深々と湧き上がる豊饒な主観性の音楽です。世界一の合奏技術をもつドイツのベルリンフィルからこのような「ロマン」溢れる音楽が奏でられるのは、面白く、21世紀が人間性=主観性の肯定と回復の時代となる先駆けのように聞こえます。

「あるべき」という世紀から、「ありのまま」の人間が賛美される新たなルネサンスの世紀へ、そんなことを思わせる音楽です。
ところで、「ブラームスはお好き」ですか。

武田康弘

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芸術の中に現れる大きな転換 (古林 治)  2009-12-03 15:12:34

先日、タケセン宅で私も二人の指揮者によるブラームスを聞かせてもらいました。端的に言えば、ヴァント・北ドイツ放送交響楽団の演奏はおそろしく精緻で硬質、片やラトル・ベルリンフィルの演奏は人間性にあふれる温かみのある演奏でした。同じ楽譜を元にドイツ人が演奏した曲とは思えないほどの違いに少々驚きました。どちらも素晴らしいのでしょうが、私には後者(ラトル指揮)の方が魅力的に思えました。(ラトルはイギリス人だそうです。)
なるほど、客観知から主観性の知へ、という大きな転換が芸術の中にも、いや芸術の中にこそ現れるヨーロッパの先進性に改めて驚かされた、というわけです。
この国の現状を見ると、ちょっぴり哀しく悔しい気もしますね。

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主観性の花咲くときへ (武田康弘=タケセン)   2009-12-04 00:18:47

古林さん、
よい感想をありがとうございます。

21世紀は、主観性の花咲く時代・個々人のロマンに依拠する時代になるとわたしは見ていますが、ラトルのブラームスは、その宣言でもあるかのような豊かな音楽です。

内面から湧き上がる音楽は、カラヤンに代表された20世紀の外面の美とは対極にあります。聴けば聴くほど心身の深い満足が得られる演奏です。

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ブラームス、よいですね (utida)   2009-12-11 11:22:48

ブラームス、よいですね。私もいろいろ聞きましたが、
名盤がいっぱいありますね。先生の言及していないところでは、
ワルターの4番とかベームでベルリンフィルの一番やNHKライブ
の一番とか・・・・個人的には2番も好きです。
少し前にチェルビダッケの4番を買いました。
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ビートルズみたい!?かな (武田康弘=タケセン)   2009-12-11 12:54:38

utidaさん

どうもベームは脂が足りないな〜(笑)、昔は繰り返し聴いた名演ですが、いま聴くとどうにも面白くないのです。ごめんなさい。

チェリビダッケは、ミュンヘンフィルとの全集を持っています。細部まで恐ろしくていねいで見事な演奏ですが、立派な「宗教儀式」に臨んでいるかのような感じで、わたしには、少しも楽しくないのです。

ラトルの新録音は、
従来、寄木細工的な、と言われたブラームスとは異なり、有機的な一体感の強い、パワフルでエモーショナルなブラームスですので、渋さ・古典性を求めるブラームス好きからすると、「青い」、とか、もしかすると、「ビートルズみたいだ」、とでも言われそう!(笑)。でも、聴くと、全身にエネルギーが漲り、うれしくなる演奏です。
この輝かしく、若々しく、まったく受動的ではない能動の最たるブラームスは、理窟抜きに気持ちよく、過去の名演を忘れさせます。騙されたと思ってぜひ聴いてみて下さい。お気に召さなくてもお代は返せませんが〜(笑)。


追記 2009年12月11日
2009年12月7日
古林 治

 
 
 
 

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