≪オーディオ≫=感性が試される総合技術は、よき音楽文化を生みます。
以下は、白樺MLです。
古林です。
オーディオ体験談です。
今日(8月17日)、私は29年ぶりに自分のオーディオ・スピーカーを買ったのですが、とてもエキサイティングな体験でしたので少し触れてみたいと思います。
私が最初に自分のスピーカーを手にしたのは大学に入ってすぐ。JBLやタンノイといった海外の製品にあこがれながらも、高価なものは手に出来ず、迫力で勝負!とばかりに自作したのが最初の体験。
フォスターという日本メーカーのFE-203Σというユニットを2発入れたバックロードホーンでした。
品性とは無縁ながらジャズやロックを迫力だけで聴くには最高(とてもクラシックは聞けなかった、笑)。それから7年後、仕事の関係でヤマハ(日本楽器)のスピーカーを安く手にすることが出来、NS-690を買いました。実はつい最近まで他のオーディオ・システムとともにNS-690で聞いていたのです。私のスピーカーはそれ以来、実に29年ぶりなのです。
で、今日の秋葉行きとなったのですが、その経緯はこんな感じです。
染谷裕太君から、オーディオのシステムづくりを依頼されていたタケセンは、40年以上も付き合いをもつ秋葉原のダイナミックオーディオに行くことになり、スピーカーを物色していたわたし(古林)にも誘いのメールがありました。わたしもよろこんで同席し、視聴した、というわけです。
その体験は?
正に、驚きと歓びの連続でした。
染谷さんのFostex GX100 |
最大の驚きのひとつは裕太君が買おうとしているオーディオ・システムのスピーカー、Fostex GX100。
そう、かつて私が自作したフォスターという会社の製品です(名称はFostexへ)。ところが、安くて迫力がある、というイメージだったものがそれとはまるで真逆。
GX100をDennonのアンプとCDプレーヤーにつなげ、ベートーベンを流す。まるでコンサート・ホールにいるような場が浮き上がってくる。音の輪郭はくっきり、透明で楽器一つ一つが明瞭に把握でき、立体感もある。音そのものに力もある。忠実な原音再生。限りなく元の音を忠実に再現してやろうというエンジニアの執念のようなものを感じます。その執念は半端なものではありません。なんだかツァイスのゾナー・レンズのあきれるほどの解像力を思い出します。それに、音量を上げても一向にバランスが崩れない。ますますパワーを上げたくなる。
これは凄い! こんな小さいスピーカーシステムでこれだけの音が聞けるのか!
あとはアンプをどれにするか。パイオニアとデノン。聞き比べれば明らか。パイオニアのアンプはよい音楽を再生しようとするけれど、GX100はひたすら原音に忠実に再生しようとする。結果的にはなんだか臨場感が失われてしまう感じ。デノンは忠実ですねえ。タケセンに言わせると地味、ということですが、細部にいたるまで原音再生にこだわるGX100にはこちらがぴったり。コンサートホールにいる臨場感、生々しさはこちららが凌駕。これで決まり!!
タケセン推薦のアンプとCDプレーヤーとスピーカーは一式で175000円(タケセンの交渉で価格コムの最安値より安い!)。
この価格でこれほどの音場が再生できるとは驚異としか言いようがありません。
これは素晴らしい買い物だ。
さて、次は私の番。
実は、真空管アンプ(Triode TRV-88SE)とCDプレーヤー(マランツSA8003)はすでに購入済みなのでこれらに合ったスピーカー探しということなのです。
タケセン推薦の真空管KT88を使ったアンプは、結構音がドンドンと出て来るタイプでエネルギーがあります。でも音自体は柔らかいです。音楽を聞かせるアンプです。
それとGX100を組み合わせるとどうなるか?良くないとは聞いてたけど、ちょっとドキドキワクワク。なぜって、あれだけ素晴らしい音出してたスピーカーですもん。でも・・・
なんだこりゃ!? 音が分離しない、ごにょごにょ固まった音魁が出てくるだけ。あきれ果てる。ガックリ!相性悪いとかではなく、まったく互いに受け入れない感じ。
それから店員さんお勧めのスピーカーをいくつか聞く。最初はJBL。えー!JBLってこんな情けない音だったっけ?モコモコして音の切れが悪い。確かに大きなキャビネットで鳴らせばそうなるよね。ちょっとがっかり。
それからElac。少し期待したのだけれど、これも今一ピンと来ない。
そこでタケセンが一言。ウィーン・アコースティック(ViennaAcoustic)はどう?
なるほど。音楽を聞かせようとする音、柔らかく訴えかけてくる。色艶たっぷりの音を奏でます。ジャズ・ヴォーカルなんかいいですねえ、これ。
でも、これじゃちょっとヌルくて飽きるような気がするなあ。音そのものに力も余りない感じ。悪くないんだけど、コルトレーンやカサンドラ・ウィルソン聞くには辛いなあ、と思っていると・・・
ピエガ(Piega)TS5
左はホスピタルグレードのコンセントとタップ |
店員さん、いきなり作業を始める。これ、どうでしょう?と奇妙なスピーカーの接続を始める。幅は10cm程度、えらく細長い華奢な感じのスピーカー。音を入れる。
何じゃこりゃあ!?
低音域がえらいしっかりしている。見た目とのあまりのギャップの大きさに大笑い。でも足腰しっかりして芯がありながら色艶もしっかり出てる。音楽を奏でてるんだなあ、これが。パワーもある、音にエネルギーもある。まったくのドンピシャリ。これで決まりだな、とタケセン。
実は私も同感。ジャズボーカルもアコースティックもエレクトリックもいける。でも、ちょっと待てよ、こんな色艶出しててクラシックはちゃんと鳴るのかいな?ベートーベンを流して10秒。はい、決まり。まったく問題なし。
新製品導入のために展示品を処分する必要のあった店員さん、あまりにドンピシャなので、勧めた本人も驚いている様子。
私のシステムは真空管アンプ(Triode TRV-88SE)とCDプレーヤー(マランツSA8003)それにピエガ(Piega スイス)TS5となりました。
展示品特別割引(約4割引き))でした。
また、タケセンのアドバイスで、オーディオのアクセサリーやホスピタルグレードの電源コンセントなども購入してきました。裕太君は、SPコード、ピンケーブル、電源コードも揃えましたが、すべて組んで鳴らすのが楽しみでしょう。タケセンはまたチューニングが大変(笑)。御苦労さまです。
裕太君のシステム(GX100)も私のシステム(TS5)もどちらも素晴らしい音を奏でてくれます。でも内実はまったく異なります。
GX100のシステムはどこまでも原音を忠実に再生しようとします。まだ音楽の志向がこれからも変化する可能性のある若い裕太君にとって、よい音楽をよい音で聴き自らの感性を鍛え上げていくには、GX100のシステムは最高のチョイスでしょうね。
一方、ある程度歳を取り、音楽の志向も定着している私のような人間にとっては、その音楽を音楽らしくエネルギッシュに鳴らしてくれるKT88真空管アンプとTS5の組み合わせは音楽を聴く喜びを与えてくれます。私にはぴったりですね。
『人生いろいろ』とアホなことを言う人もいます。でも、それとは意味が違って、『よい』には質の違いがありますが、その一つの『よい』を生み出し、発見することは手間がかかり、また、よいアドバイサーの力が必要です。しかし、「一つのよい」を見い出したときには、言葉にならぬ大きな喜びが得られます。
というわけで、今日は二つのよい音を発見することが出来、とてもエキサイティングな一日となりました。(古林治)
参考:
http://www.fostex.jp/p/sp_index/Fostex GX100
http://www.piega.jp/products/ts5_01.html Piega TS5
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武田(タケセン)です。
古林さん、ピッタリのスピーカーに出会ってよかったですね。
お誘いしたかいがありました。
「『人生いろいろ』とアホなことを言う人もいます。でも、それとは意味が違って、『よい』には質の違いがありますが、その一つの『よい』を生み出し、発見することは手間がかかり、また、よいアドバイサーの力が必要です。しかし、「一つのよい」を見い出したときには、言葉にならぬ大きな喜びが得られます。」(古林)
ここが核心ですね。
同じオーディオシステムという枠内でも「よい」は実にいろいろ、多種多様で、目眩がするほど(笑)。
でも、ダメ・悪い、と ピッタリ・よいはハッキリしています。
このピッタリ〜〜を見出すのは、実はとても難しく、雑誌やネットという情報を頼りにうかつに手を出すと、酷い目に合います。時間とお金を持て余し、音楽経験も十分にある人でないと出来ません(笑)ホントウです。多くは、「主観主義」に陥り、オタク化してしまいます(独りヨガリ)。コード一本、置台ひとつで音はコロコロ変わりますので、座標軸が定まらないと、無限地獄!!(笑)
というわけで、音楽の愉悦に浸りたい方、音の魅力を味わいたい方は、この道42年のタケセンにご相談ください(笑)。ただし、総予算の最低限は25万円ですので、それ以上でお願いします(なんだか商売みたい?)。
音楽を聴く装置=オーディオは、主観性の「よい」の探求で、まさに哲学です。
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染谷裕太です。
こんばんは、染谷です。すみません、ちょっと遅くなりましたが今度は僕のオーディオ体験談を。
古林さんの体験談にも出てますが、数ヶ月前(就職する前)、タケセンにオーディオのシステムづくりをお願いしました。僕の場合、古林さんと違って元々オーディオをやっていたわけではなかったので、本当に何も分からない状態からのスタートでした。
元々オーディオをやっていたわけではなく、クラシックの生演奏を聞いたことがあるわけでもなく、むしろ小学校の頃は音楽だけは毎学期必ずABCの「C」をとるくらい(笑)で、音楽を積極的に聴き始めたのも大学に入ってからという、音楽体験の乏しく、まさかオーディオに20数万もかけるようになるとは思えない人生送ってましたが、それでも買ってしまったのは恐らく、というより間違いなくタケセンの家にあるオーディオで音楽を聴いたからでした。自分の家にあるしょぼいミニコンポでも聴いていれば「よいな」と思ったり、感動のようなものを感じることはありますが、本物のオーディオでよい音楽を聴いた時には心臓を打ち抜かれたような感動を覚えます。その世界を知ってしまったらやっぱり欲しくなりますし、程度の低いものを持っていると、自分の程度もその程度みたいで、そのこと自体嫌になってきます。そんなわけでオーディオが欲しくなったのですが、機材やセッティングに関しては自分では「何が分からないのか分からない」状態なので、それ関してはもう完全にタケセン任せで、とりあえずなるべく早く最低ラインと言われた金額まで貯金するのに勤しんでました。
それで16日、お金も貯まった所で秋葉原へ連れてってもらい一式揃えたわけですが・・・
オーディオの世界は自分が思っていたよりもずっとずっと奥が深くて際限がない世界でした。
実は秋葉原に行く前に、一度タケセンと柏の「オーディオユニオン」という所へ行って、その時に今回購入したスピーカーGX100ともう一つどこか(どこのでしたっけ?)※注のスピーカーを聞き比べていました。価格差は2万円くらい(GX100の方が高い)だったのですが、その音の差は僕でもハッキリと分かりました。これは全く比較にならない、この値段の差でこれだけの違いはありえない、と。
GX100の方はあの小さな箱から出ているとは思えないくらいに音に密度があってクリアに聞こえて「聴きたい!」という欲求に十二分に応えてくれると感じましたが、もう一つの方はBGMで流す程度ならむしろ良いかもしれないけど、「聴きたい!」と思ったら完全に欲求不満になるような音でした。
染谷さんのアンプとCDプレーヤー |
秋葉原のダイナミックオーディオではGX100にデノン、トライオード、パイオニアのアンプとの組み合わせで何度か繰り返して聴いて、正直色々な組み合わせを次から次と聴いて途中わけがわからなくなったのですが、最後の方、改めてデノンを聴いた時に「あ、やっぱりこれだな」と思いました。
真空管アンプは音がこもって明らかに合ってない。パイオニアの方は最初聴いた時は「キレイ」という印象を持ちましたが、何度か聞き比べていると落ち着いてじっくり聴くにはなんだか軽くて飽きる感じでした。
最初、自分なりに理解するためにオーディオを自転車に当てはめてスピーカーがフレームでアンプがホイールかなぁ、などと考えていたのですが、全然当てはまらない!ということが分かりました。音に影響する要素は本当に沢山あって、僕はまだアンプとスピーカーの組み合わせで変わることくらいしか体験してませんが、電源コードで音が変わる、置く台で、置き方でも音が変わる、それもかなり変わる。さらに難しいのは高級品で全て揃えたからといって最高の音が出るわけでは全くなく、逆に最悪な音になるかもしれないということ。さらにはどんな部屋でどのように聴くかなど、様々な要素を同時にまとめて、引いて見ることが必要で、ものすごく骨の折れる作業だということを、タケセンに任せきりながらもヒシヒシと感じました。一個一個、部分部分だけを追っていたら本当に大変なことになりますね、これは。
最後に今日とりあえず線つないで聴ける状態にしてみたのでその感想を。
自宅で改めて聴いてみると、やっぱり良い!です(笑)。
今まで聞いていたコンポとは音の存在感が全然違います。雑音も照明も音に対して凄く邪魔に感じます。暗くして一人で静かにじっくりと聴いたら相当楽しそうです。
面白そうなのでクラシックだけじゃなく、モーニング娘のCD(僕のではないですよ)も聴いてみましたが、なんと下品なことか!ポップスの音としての質がこんなにも酷いものだとは思ってませんでした。他のJ−POPも聴いてみましたが同じでした。前にタケセンがクラシックは音として高級だと言っていた意味がよーく分かりました。ポップスしか聴かない人はよいオーディオを買ったらイケナイですね(笑)。分かりすぎてしまって全然聴いていられません。
とりあえず一通りは揃って聴けるようになったので、これから色々とやっていくのが楽しみです。
染谷さんのオーディオ・システム
リビングにばっちり収まりました。時間が出来たらアンプとCDプレーヤー用のオーディオ・ラックを作るとのことです。 |
(※注 このスピーカーは、KEFのIQ30です。)
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裕太君
「タケセンの家にあるオーディオで音楽を聴いたからでした。・・本物のオーディオでよい音楽を聴いた時には心臓を打ち抜かれたような感動を覚えます。」
なにかを欲するのは、何であれ「感動」が出発点ですよね。感動なしに(ただ外にある世間の価値に従って)何かをする人が多くなったのが現代ですが、それでは人間の芯が豊にならず、硬直し、紋切型のエロースに乏しい存在にしかなれません。いろいろな「感動」がこの裕太君のメールには溢れていて、読んでいてとても気持ちがよいです。今度はコンサートホールにも足を運んでくださいね。
「今日とりあえず線つないで聴ける状態にしてみたのでその感想を。
自宅で改めて聴いてみると、やっぱり良い!です(笑)。」
おー、おめでとう!スピーカーはじめ、すべての機材(コード類も)は鳴らしこむと音がよくなります。毎日聞いて下さい。大きめの音量で鳴らさないとエージングが進まないので、おやすみの日は近所迷惑で〜(笑)。来週チューニングに行きます。
タケセン宅のオーディオ・システム
スピーカーはTHIEL/ティールの CS2.3(2001ニュータイプ)です。
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つづく。