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33.思想は、真に現実的でなければ
              意味がない

 世の中、これだけ不景気になってくると殺伐としてくるものです。グローバル・スタンダードを声高に叫び、弱肉強食の生存競争に明け暮れる人が出てくるのもわかる気はします。どちらかというと思想というものを否定する人に多いように感じます。
 一方で、そうした風潮はおかしいと理想論を掲げる人も出てきます。これもわかりますが、思想の本質をとらえ違えているように思います。
 私は最近、後者の問題に巻き込まれて頭を抱えていますが、実はどちらも人を疲弊(ひへい)させ、幸福にしない思想の典型ともいえるのです。
 では、思想とはどういうものなのか、タケセンからのメッセージです。

思想は、真に現実的でなければ意味がない

 リアリティーのない宙に浮いたような話をする人。何かしらの理想論に囚われて、目の前にある物事が見えていない人、考える対象にきちんと向き合えないために本筋から思考がずれて話が空転してしまう人。

 既存の価値観や常識に縛られているために、目先の利益や即物的な価値しか分からない人。金品のように現実的価値だと思われているものも含めて、全ての価値は「幻想価値」であることを知らない人。

 「理念・ロマン」主義者「理想」主義者と同じく、「現実」主義者も又まったく現実的ではありません。狭く硬い自我からしか思考していないからです。両者は一つのメダルの裏表にすぎません。この二つの自我主義は、ともに人間の生活を台無しにしてしまう非現実的な思想です。

 人間社会に起きる問題を改善し、解決していくための現実的な思考は、人間存在の「幻想」性についての明晰な自覚から始まります。経済や物質から考えれば現実的になるのではありません。それらも又人間的=幻想的価値の一つでしかないことの了解から始まるのです。

 自分が知らずに身につけている価値観を意識化する努力。何が本当によいことなのか?の沈思→意識を透明にしていく練習、思考の訓練。自問自答のみならず、自分の考えを他者に示し試すこと→試行錯誤と検証。

 思想とは「理想」を語ることではありません。現実の私たちの生をよりよいものにしていく有用な知恵のことです。真に現実的でなければ、思想には価値がありません。何をどう考え、どう行為したら、深い納得がやってくるのか? 本来、思想とは、現実に生きているこの私と社会についての真に最も現実的な知恵なのです。

2003,3,23 武田 康弘

2003年6月2日 古林 治

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