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30.清瀬保二(きよせやすじ)CD
  生誕100年記念演奏会

 去る3月9日、とんでもないCDを聞く機会がありました。出来立てのほやほやのものを松橋さんがタケセンに届けてくれたものです。

 この4枚組みのCD、【清瀬保二 生誕100年記念演奏会】はその名のとおり、日本最高の作曲家、清瀬保二をたたえて音楽家たち有志が企画・開催した音楽会の模様をCD化したものです。
 聞いてびっくり!柳兼子の歌を聴いたとき同様の驚愕にとらわれてしまいました。これほどの健全な生命力に満ちた音楽を創造する人間がこの日本にいたのか。あの柳兼子が晩年、『私はもう清瀬さんの歌しか歌わないのよ。』と言っていたわけが本当に良くわかります。化け物は化け物を知るということですね。清瀬保二の弟子であり、世界的にも有名な武満徹の音楽がか細いものに聞こえてしまいます。
 たとえば、Disk4には、尺八三重奏曲(1964)と弦楽三重奏曲(1949)が収められていますが、前者はもちろん尺八による演奏で、巷に良くある単にフルートのように尺八を吹くものや、過剰に東洋を表現するエキセントリックなものでもなく、正しく、良き日本の伝統を踏まえた清瀬保二自身のオリジナルな新しい音がここにあります。
 後者の弦楽三重奏曲はその名の通り、西洋音楽には違いないですが、深みと美しさと強さが同居する清瀬保二のオリジナルな音に満ち溢れています。

 ただ、とても残念なことが二つあります。
一つは、このCD、関係者に向けた非売品なんです。 ごめんなさい。でも、何で市販しないんだ!!
もう一つ、多分、演奏家たちは清瀬保二が書いた楽譜を解釈する時間があまり与えられていなかったと思われます。実際に清瀬保二の音楽を聞く機会は少なく、楽譜もポピュラーなものではないからです。柳兼子が非常に長い時間をかけて清瀬の音楽を解釈し素晴らしい歌にしていったことを思えば、そのことがとても残念でなりません。
実際に、清瀬自身が伴奏し、兼子が歌ったものが【永遠のアルト 柳兼子】 に収録されています。【いつとなく(1927)】がそうですが、同じ曲目がこのCDのdisk1にもあり、その違いはとても興味深いものです。あまりの違いに絶句しそうです。力強い生命力にあふれる【響き】というものをとても大事にしたと言われていますが、そのことがとてもよくわかるのです。

 というわけで、市販されていないCDのご紹介でしたが、興味ある方は白樺教育館へお越しください。いずれ、【清瀬保二  生誕100年記念演奏会】を聴く会なるものを開くと思いますので、そのときにはまたお知らせします。

参考:  27.柳兼子をたたえて 【お話と歌曲の夕べ】 その後
      28.清瀬保二の人と音楽語法

 最後になりましたが、このCDを聞いてタケセンが記した[清瀬保二の世界]をご紹介します。

清瀬保二の世界
「ヴァイオリンとピアノのための二楽章」を聴きながら

心がある。純粋な心がある。
心が心に重なる。
なつかしく、うれしく、充実する。

一つの無理も無い。
心身に深く音が染み込む。
人為的色づけではなく、自然界の芳醇さ。
しみじみと美しい。

頭脳で勝負!でも、感覚で勝負!でも、肉体で勝負!でもない。本物の人間が、深く澄んだ心を持った奥深い人間がいる。
素朴にして高貴。
独創にして自然。

武田 康弘


2003年4月5日  古林 治

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