この絵を選んだ理由(わけ)
この絵は、
親しみがあって
のびやかで
優しくて
自由で
楽しく
夢がある。
何にも負けない豊かな強さもある。
武田 康弘
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雑誌『白樺』第三巻第三号 表紙絵
1912(明治45)年3月1日発行の表紙絵に使われた南薫造(みなみくんぞう)作の絵。南薫造の絵は幾度となく雑誌『白樺』の表紙絵に利用されています。特に有名なのは雑誌『白樺』のロダン特集号に使われたものです。
この時代の文学と美術について、『白樺派と近代美術』は次のように指摘しています。
「・・・明治末から大正期は、ヨーロッパの美術が次々紹介され、一種独得の文化が華やいだ時期であった。大正期といえば大正デモクラシーという言葉がすぐに思い出されてくるが、明治期には富国強兵、殖産興業といった言葉が示すように、個人は国全体のために奉仕すべきものと考えられていたが、明治末から大正期に入り、自己が自覚し、自己を生かしきることが全体のためになるとする風潮が起こってきた。これには『白樺』などの文芸雑誌による啓蒙と、ヨーロッパで学んだ画家たちの帰国が原動力となっていた。「大正時代の油彩画壇における運動は、多くの近代的な文学運動に触発されたものであり、しかも、この時代はわが国の文化史上他にその例を見ない、文学と美術が最も接近した――というより、殆ど一体となって――活動を展開した時代であった」
(東珠樹『白樺派と近代美術』東出版)
(古林 治)
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